多くの温泉ファンの夢を実現してくれた
本書はタイトルにあるように「日本一周3016湯」を回った記録をまとめた本。
車中泊が流行しつつある昨今において、いつかは自分もやってみたいと思っている
温泉愛好家諸氏も多いことと察せられます。
旅の最中から発信していたものを纏めた本なので、前から順に読んでいくと、
次第に旅慣れていく著者の様子もうかがい知ることができます。
そういう部分も、いつか自分がこんな旅をしようって時に役立ちそう。
忙しくて旅になんていけないよ、という読者でも、その代理体験として温泉巡りが
できるような気持ちになれます。
著者について
高橋/一喜
温泉エッセイスト。1976年千葉県生まれ。上智大学卒業後、2000年ビジネス系出版社に入社し、雑誌や書籍の編集に携わる。08年3月、会社を辞め、「日本一周3000湯の旅」に出発。386日かけて3016湯を踏破。現在はフリーランスの立場で年間30冊の書籍の編集・ライティングに携わるかたわら、温泉エッセイストとしても活動する。温泉ソムリエ。-amazonより引用-
本書出版時点ではフリーランスとなってるようです。本書で「温泉に入りたいので、会社を辞めさせてください」という言葉から始まるので、全国一周温泉の旅に出るために退職しています。
日本全国の温泉を1年余りで巡った記録
温泉の魅力に取り憑かれ、会社を退職して中古車一台を購入し、日本全国の温泉に入るという生々しいまでのリアルなレポートです。
本書のレビューに散見されるように「だんだん文章が上手くなっていく」という、著者自身の発信力の成長も見られるという稀有な一冊。
旅に出るまでのエピソードも、きっと会社勤めをしている多くの読書が憧れるような場面で
展開していきます。自分もこんな風に辞めて旅立ってしまいたい、と思うのでは。
そんな壮大な全国の温泉を巡る旅も、千葉県からスタートします。
著者の地元でもある千葉県に、なんと93ヶ所も温泉があるといいます(全国で11番目)。
本書のように、全国の温泉を巡るということでもない限り、一般的に温泉のイメージがない
千葉県のような場所で、豊富に温泉が存在しているという事実すら知ることもないでしょう。
著者が成し遂げたこの旅は、マイナーな温泉にもスポットライトが当たるという意味でも
大変貴重な記録となります。
これから挑戦する人向けのマニュアル
本書には、この旅を進めるために必要な物品、所要日数、費用も紹介されています。
詳しくは本書をご参照いただきたいのですが、本書表紙の帯にもある通り、
全行程をこなすのに386日間、かかった費用は450万円。
そして著者的ベスト1の温泉は、共同浴場天国の別府温泉郷との事。
巡る順番や天候、季節や個人的好みなども影響するのでしょうが、
全国の温泉を巡った結論としての「お気に入りの温泉地」は、説得力があります。
このほかにも、鄙びた温泉地の共同浴場などのわかりにくい浴場への行き方や、
現地でのエピソードが詳しく載っているので、読みながら温泉地にいるような
感覚も楽しめます。
言わば未知の温泉地へ出かけるためのイメージトレーニングにもなります。
この本をオススメしたい人
本書は上記の通り、日本全国の温泉を一人で回った旅の記録です。
同じような挑戦を夢見る温泉ファンはもちろん、そこまで気合い入れて温泉巡りを
しないまでも、気ままに車中泊などをしながら温泉を巡ろうかななんて考えている
方にもオススメです。
事前に行き先の情報がわかっているって、かなり大きな安心材料にもなりますし。
それから、いつかこんな旅に出てみたいけれど、当面はそんなことできないし、
計画も予定もないよ、という方。
読書の最大の効能とも言っていい「代理体験」ができます。
実際に386日、450万円というリソースを投入しなくても、本書の値段(1,400円+税)で
著者が辿った全国の旅が追体験できます。
憧れの温泉巡りがどんなものなのか、ちょっと見てみるには安い投資でしょう。
本書から得られるもの
いわゆるビジネス書や教養書の類ではないので、特段得られるものはないです。
しかしこうした温泉巡りの旅や、全国を巡る旅を計画中または夢見ている人にとっては、
事前情報を得るという意味では非常に有意義な書籍と言えます。
本書の登場によって、いつかは全国の温泉を巡ってやろうという熱い想いを持った人が、
大いなる刺激を受けて著者に続くのではないかと思います。
本書から得られるもの、それは読み手に委ねられる性質が強い本です。
書評まとめ
私自身も、いつかはマイカーで全国の温泉を巡りたいと考える「温泉ファン」の一人です。
そんな私が読んだ感想では、「先を越されていた」という気持ちが強かったです。
一方で、とにかくたくさんの温泉巡りをした方がいるなら、自分また違った視点から挑戦し、
もっと面白く、マニアックな旅にしたいと考えるきっかけにもなりました。
それから、車で全国の温泉を巡る時に、一日に8箇所も入れるものなんだという、
実際の入浴頻度やその後の体調の変化などの旅の実際の運用面が詳しくわかるので、
この著者の体験を踏まえた上で、自分のコンディションに合わせた準備が可能となります。
ただ読むだけでは単なる全国温泉巡りの旅で終わってしまいますが、このような旅に
憧れる方々が読むとしたら、それは日本一周温泉巡りの実践マニュアルの側面も持っている
本とも言えるものです。


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