単純温泉とは
温泉法上の定義である湧出温度が25℃以上で、温泉水1kg中の溶存物質量(ガス性のものを除く)が1,000mg未満のものを指します。特にpH7.5以上のものを「弱アルカリ性単純温泉」、pH8.5以上のものを「アルカリ性単純温泉」と呼びます。
つまり溶存成分が薄い、温度のみが温泉および療養泉の条件を満たしているものです。
なんか薄くて効果がなさそう、と思いがちですが、家庭用入浴剤を使う場合と比較してみます(私も単純温泉は温かい真水かと思っていましたが、計算したらそうでもないようです)。
【参考】家庭の風呂との比較
家庭用のお風呂は一人用なら200リットル、二〜三人用は300リットルの浴槽が多いようです。そこに、一般的な市販入浴剤を20〜30gを溶かします(投入量は入浴剤の説明書を参考にしています)。
投入した入浴剤が全部溶けると、溶存物質は風呂水1kg(1リットルとしてもいいと思います)あたり、100mgになります(20g÷200リットル=0.1g(つまり100mg)。
これに対して単純温泉は、温泉水1kgあたり1,000mg未満の溶存物質を含んでいることになります(0〜1,000mgなので幅広いです)。そのため、最も濃い場合の単純温泉を家庭で再現しようとすると、標準的な入浴剤の10倍ほどの投入が必要になります。もはや濃すぎでドロドロしそうな量です。
そんなわけで、単純温泉といっても薄いとは限らないということなので、むしろ「単純温泉マニア」として多くの単純温泉を巡る、という縛りプレイができます。
「単純温泉」=「温かい水」とは限らないわけです。単純温泉でも「すごく効いたなあ!」という温泉もありますからね。単純温泉なのに複雑ですね!
療養泉ではないけど成分が濃い温泉
単純温泉(療養泉の一種)に対して、そもそも療養泉になれないのに濃い温泉というのも存在します。参考までに。
“温泉の定義に掲げられているが療養泉の定義に含まれていない物質” (リチウム、ストロンチウム、バリウム、マンガン、臭素、フッ素、ヒ酸水素イオン、メタ亜ヒ酸、メタほう酸、メタけい酸、炭酸水素ナトリウム)のいずれか又は複数を規定量以上含み、湧出温度25℃未満、溶存物質1000mg未満の場合は、療養泉ではないので泉質名がつきません。そこで温泉分析書には「温泉法上の温泉」又は「温泉法第2条に該当する温泉」という表記をされるようになります。
しかし突出して濃い成分が含まれている場合、「メタけい酸泉」や「メタほう酸泉」などと表記して効能のアピールをする場合もあるようです。繰り返しますが療養泉ではありません。
ただしメタけい酸を多く含む温泉などは、お肌がスベスベになったりするようです。アルカリ性単純温泉でもお肌の角質を取り除くのでスベスベになりますが、お肌の改善は効能として認められていないんですね。療養してまで改善するものではないですしね。
なお、墨汁のようだったりコーヒーのようだったりする黒湯、「モール泉」(植物性有機質を含有する温泉)は、これも療養泉に分類されるための物質を含んでいないので、単純温泉として扱われます。
こう考えると、単純温泉は規定物質を含まない温泉ならなんでもありです。やはり奥が深い。
この泉質の特徴
無色透明で無味無臭。肌触りがよく、クセがない。アルカリ性単純温泉は皮膚を溶かして角質を軟化させ、皮膚をすべすべにすることから「美人のゆ」などと呼ばれる。血中の酸性度を和らげる効果が期待できる。ただし、強アルカリ性は肌の脂分が取られすぎる場合があるので注意が必要。
-『ぶくぶく自噴泉めぐり 改訂新版」山と渓谷社 より引用-
単純温泉なので突出した効能はないんですね。ただし、成分が希薄で刺激が少ないため、精神的にリラックスすることに繋がるようです。お肌の敏感な赤ちゃんに優しいと言いますから、温泉デビューは単純温泉で決まりです。
例えばこんな温泉
都幾川温泉・・・日本一pHが高い(pH11.3)。高校化学の教科書に記載されている。
道後温泉・・・超有名。アルカリ性単純温泉の見本のような温泉。塩素添加で話題に。
基本的に全国どこででも楽しめる温泉で、掘削した温泉に多く見られます。
また、他の9種類の療養泉と比較しても刺激が少ないので、老若男女、幅広い人がリラックスできる温泉とも言えます。刺激が少ない温泉がお好みの場合にはオススメ。
適応症
泉質別適応症は自律神経不安定症、不眠症、うつ状態。
禁忌症
泉質別禁忌症は一般的禁忌症に準じます。
「単純温泉」に属する泉質
旧:単純温泉 新:単純温泉(pH8.5以上はアルカリ性単純温泉) 略:なし
「単純温泉」は、療養泉の定義上の物質を規定値以上含まず、湧出温度が25℃以上。
そうはいっても泉質だけではない温泉の力
単純温泉について調べていくうちに、色々な温泉が含まれることがわかってきました。
お肌に良いとされるメタけい酸を含むものや、真っ黒いお湯が特徴的なモール泉など、特徴的
なお湯とも思える温泉も、それらの物質には療養としての効能は認められないということで
単純温泉に含まれてくるんですね。
単純温泉であっても、伝統的効能がある(現在の医者が調べた効能とは別に)とされる温泉
多く存在します。
また、道後温泉のように最も古い時代からその効果が語り継がれてくるものもあります。
療養泉として体に及ぼす効果が弱かったとしても、精神面に及ぼす影響や、目に見えない部分
で体を活性化する、何らかの要素を含んでいるんじゃないかな、と思う温泉も多くあります。
かつて湯治は、医療が未発達だった時代には長らく唯一の療養法といってもいいものでした。
そこには何か、人知を超えたものがあるという感覚も働いていたのかもしれません。
現在の化学的な分析に基づく評価だけでなくて、もっと総体的に心身両面から温泉の効果が
証明されるようになったらもっと温泉を奥深く味わえるようになりそうです。


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