「温泉」のイメージを覆した一冊
本書は山田べにこさんと言う人が、一人で野趣あふれる温泉を巡った記録、という体裁で
まとめられた温泉紀行本。
温泉というと、お年寄りが旅行先として選ぶ行き先No.1という思い込みがありましたが、
本書との出会いで、イメージが覆りました。
世間でも秘湯巡りが人気になり、大深度掘削による人工的な「天然温泉」が乱開発といっても
良いくらいどんどん増えていた頃です。
本書は2010年発行なので10年前の本です。既に閉鎖されている温泉や観光客お断りになって
いる温泉もあるようですが、簡単にはたどり着けない秘湯中の秘湯や、野趣あふれる山奥の
温泉などが載っているので、行き先を決める時の資料としてはまだまだ戦力です。
何よりも著者が普通に会社勤めしている女性である、と言う点が、多くの人に希望を与えた
点が大きいと思います。私もそんな中の一人。
自分ももしかしたらこんな温泉に入れるのかも!という希望をもらえた本ですから、
私自身にとっても思い入れのある一冊です。
著者について
本書に記載の著者紹介より引用します。
山田べにこ(やまだ・べにこ)
平日は会社勤めをしながら、週末・休暇には軽自動車を駆使して温泉めぐりを楽しむ温泉愛好家。これまで入ってきたお湯の数は3,000湯以上!その中には片道数時間もかかる地図にもないような秘湯や、登山しないと入れない山小屋温泉なども。とにかくお湯に入るためならどんな苦労も厭わない。まさに温泉マニア。そのきっかけは、とある温泉に宿泊した際、湯上りの肌の質感変化に気づき、感動したこと。以来、温泉成分に興味を持ち、温泉と名のつくところならどんなところでも肌で感じてみたいと、温泉めぐりにのめりこむ。2010年にはTBSのバラエティ番組『新知識階級 クマグス』でその活動が取り上げられ、話題に(番組自体は2010年9月に終了)。そのほか、さまざまなTV・雑誌で活躍。CS旅チャンネルでは、本人が案内する番組『野天湯でGo!』が好評放映中。iPhoneアプリ『べにこの秘湯図鑑』も発売中。
-本書「プロフィール」より引用-
本書発刊当時の情報なので、『野天湯へGo!』もやってませんしアプリもすでにありません。
時の流れを感じますが、それでもこの本に載っている温泉は、変わらずにそこにあります。
本書の内容について
べにこさんが実際に入って、これはよかった!というお湯を紹介しています。
大きく4つのテーマに分かれています。
一度は訪れてみたい秘湯の宿
1章冒頭には以下のような文章が添えられています。
歴史ある名湯から山奥の秘湯の一軒宿まで、
日本には素晴らしい温泉宿がたくさん存在しています。その中から数を絞ってご紹介するのはとても難しいのですが、
何かしら強い特徴のあるお宿を源泉いたしました。秘湯ブームで人気の宿は予約が取りにくいと言われていますが、
日帰り入浴ができる宿も多いので訪れる価値はあります。宿泊してのんびりお湯と食事を楽しむもよし、
日帰り入浴でお風呂だけ堪能するもよし。お気に入りのお宿を見つけてください。
最近のオススメ温泉宿リスト本に比べて、なんか気品があるような気がしませんか。
下品な「どうだー!」感がなくて、なんとも爽やかな雰囲気を纏っています。
どの宿もきっと素晴らしいお宿なのでしょうが、紙面の都合上やむなく数を絞り厳選しました
という残念な気持ちが伝わってくるよう。
過去にこんな本があったというのに、「温泉に詳しいワシが選んでやった」感がプンプンする
本はなんなのでしょうね。
なお、本章では宿とお湯が素敵な場所を厳選して紹介しているので、宿泊してゆっくり過ごす
ことができて、温泉慣れしていない人でも安心できます。
1章に載っているお湯
秋田県 乳頭温泉郷/鶴の湯温泉、秋田県 乳頭温泉郷/妙乃湯温泉、秋田県 乳頭温泉郷/黒湯温泉、秋田県 泥湯温泉/奥山旅館、宮城県 吹上温泉/峯雲閣、秋田県 秋の宮温泉郷/鷹の湯、北海道 上の湯温泉/温泉旅館 銀婚湯、青森県 酸ヶ湯温泉/国民保養温泉 酸ヶ湯、岩手県 夏油温泉/元湯夏油、秋田県 乳頭温泉郷/大釜温泉旅館、宮城県 作並温泉/鷹泉閣 岩松旅館、福島県 高湯温泉/安達屋旅館、秋田県 須川温泉/栗駒山荘、山形県 赤倉温泉/あべ旅館、山形県 赤倉温泉/湯守の宿 三之亟、栃木県 奥鬼怒温泉郷/加仁湯、栃木県 塩原温泉/明賀屋本館、栃木県 大網温泉/湯守 田中屋、群馬県 四万温泉/積善館本館、群馬県 沢渡温泉/まるほん旅館、群馬県 宝川温泉/汪泉閣、長野県 信州高山温泉郷/五色の湯旅館、長野県 信州湯田中温泉/よろづや、長野県 渋温泉/歴史の宿 金具屋、長野県 奥山田温泉/満山荘、静岡県 伊豆下田河内温泉/千人風呂 金谷旅館、長野県 高峰温泉/ランプの宿 高峰温泉、新潟県 駒の湯温泉/駒の湯山荘、山梨県 奈良田温泉/白根館
番外編 旅のお楽しみ・こんなスポットにも足を伸ばそう!
宮城県 かんけつ泉 弁天、岩手県 小岩井農場まきば園、秋田県 小安峡大噴湯、秋田県 秋の宮博物館
海!山!川!自然を満喫する絶景温泉
続いて第2章です。1章とは違い自然の中にある野趣あふれるお風呂が紹介されています。
温泉の魅力は、宿だけではありません。
川に温泉が湧き出ていたり、
波がかかりそうな海のすぐそばに湯船があったり、
滝つぼが温泉になっていたり…。ここではそんな、自然と一体化できる絶景風呂をご紹介します。
中には山歩きをしなければ行けないなど、
アクセスが大変なところもありますが、
きっと苦労する甲斐があるはず!安全に気をつけてトライしたい温泉です。
2章のお湯は本格的な登山とか、もはや温泉に保養に行くなんていう生易しい場所ではなく、
かなり気合の入ったマニア向けの秘湯が紹介されています。
温泉に疲れを癒しに行く、というよりはもうそのお湯に浸かるために苦労を厭わない、と
いう姿勢でないとたどり着くことができません。
こういうお湯にもたくさん浸かっているからこそ、べにこさんは他の温泉マニアとは一線を
画しているとも言えます。
2章に載っているお湯
秋田県 秋の宮温泉郷/川原の湯っこ、宮城県 吹上沢 地獄谷遊歩道/紫地獄、秋田県 川原毛地獄/川原毛大滝湯、秋田県 ふけの湯温泉/蒸ノ湯、岩手県 藤七温泉/彩雲荘、岩手県 網張温泉/休暇村岩手網張温泉 仙女の湯、北海道 然別湖コタン/然別湖 氷上露天風呂、北海道/瀬石温泉、北海道 コタン温泉/コタンの湯、北海道 知床八景/カムイワッカ湯の滝、新潟県 蓮華温泉/白馬荘 蓮華温泉ロッジ、東京都 三原山温泉/大島温泉ホテル、群馬県 尻焼温泉/尻焼露天風呂、東京都 式根島/地鉈温泉、青森県 不老ふ死温泉、東京都 新島/湯の浜露天温泉、東京都 八丈島/裏見ヶ滝温泉、長野県 地獄谷温泉/後楽館、静岡県 北川温泉/黒根岩風呂、長野県 切明温泉/河原の湯、静岡県 岩地温泉/ダジュール岩地、静岡県 熱川温泉/高磯の湯
番外編 歩いてしか行けない山小屋温泉へ
長野県/白馬鑓温泉小屋、長野県/本沢温泉、福島県/渋沢温泉小屋、新潟県 赤湯温泉/山口館
神秘を感じる色のキレイなお湯
3章では色鮮やかなお湯を、それぞれ色別に紹介しています。
温泉といえば、硫黄の香りがプンとただよう
乳白色のお湯を思い浮かべる方も多いのではないでしょうか。でも国内には、他にも鮮やかなオレンジ色の湯、
緑・青・黒・茶色などさまざなな湯色の温泉があります。色つき湯は美しくも珍しく、またその豊かな温泉成分が一目瞭然でわかり、
目で見ても楽しいものです。
成分と時間の経過によって、さまざまな色を呈する温泉の神秘。この章では、私の大好きな色つき湯を、色別にご紹介していきます。
3000湯以上に入浴しているだけのことがあり、自然に湧き出している温泉とは思えない程の
鮮やかな色のお湯も紹介されています。
泉質ごとの違いも関連してくるのでしょうが、この本では難しいことにはあまり立ち入らず、
お湯そのものをしっかり味わい、楽しむことを目的としています。
本当に「お湯を感じるため」の情熱には脱帽です。
3章に載っているお湯
【緑のお湯】
岩手県 国見温泉/石塚旅館、北海道 丸駒温泉/湖畔の宿 支笏湖 丸駒温泉旅館、岩手県 国見温泉/森山荘、宮城県 川渡温泉/藤島旅館、宮城県 鳴子温泉/西多賀旅館、新潟県 月岡温泉/熊堂屋、新潟県 咲花温泉/一水荘、長野県 屋敷温泉/湯元 秀清館、長野県 熊の湯温泉/熊の湯ホテル
【青いお湯】
北海道 湯の川温泉/日の出湯、北海道 雌阿寒温泉/オンネトー温泉、岩手県 栗駒山麓/須川高原温泉
【オレンジのお湯】
秋田県 南玉川温泉/はなやの森、北海道 十勝岳温泉/湯元 凌雲閣、青森県 石神温泉/プレジャーランド石神温泉、長野県 天狗温泉/浅間山荘、群馬県 伊香保温泉/ホテル小暮、山形県 湯の沢間欠泉/湯の華、福島県 古町温泉/赤岩荘、福島県 深沢温泉/むら湯、福島県 赤湯温泉/好山荘、栃木県 報恩温泉/ホテル報恩、長野県 小赤沢温泉/楽養館
【白いお湯】
新潟県 燕温泉/黄金の湯、栃木県 那須高雄温泉/おおるり山荘、長野県 七味温泉/紅葉館、長野県 白骨温泉/泡の湯、秋田県 日景温泉、群馬県 万座温泉/松屋ホテル、北海道 新登別温泉/旅館四季、福島県 野地温泉/野地温泉ホテル、栃木県 老松温泉/喜楽旅館
【黒いお湯】
東京都 深大寺温泉/ゆかり、東京都 蒲田黒湯温泉/ホテル末広、栃木県 塩原元湯温泉/大出館、新潟県 西方の湯温泉/西方の湯、新潟県 三島谷温泉/永久荘、千葉県/老人保養センター 小糸川温泉
温泉の醍醐味!個性的なお湯
4章では温泉マニアにとってはたまらない、強烈な特徴を持つ温泉たちが紹介されています。
自称お湯マニアの私が、愛してやまない個性的なお湯をご紹介します。
「足元湧出のお湯」というのは、
源泉が湧き出している場所に湯船が造られている温泉を指します。足元から新鮮なお湯がこんこんと湧き出してくる、
温泉好きにはたまらないお風呂です。「析出物がすごいお湯」というのは、
右ページでご紹介した温泉の成分が結晶となり、浴槽に千枚田のように積もっている温泉。「強烈個性のお湯」は、
強アルカリ性や強酸性など、珍しい泉質をもった御湯を集めました。
本章に記載の「足元湧出のお湯」は、源泉の上に湯船が造られており、地中から初めて地上に
現れた瞬間のお湯に入れるという、最も贅沢で効果が高い温泉です。
また、析出物がすごいお湯、強烈個性の湯も、お湯の鮮度や溶存物質の濃度が桁違いに高い
ケースがほとんどです。一度入浴したら、そのパワーに圧倒されること間違いなしです。
湧きたて新鮮なお湯の力を、自分の体で確かめてみませんか。
4章に記載されているお湯
【足元湧出のお湯】
北海道 ニセコ薬師温泉/薬師温泉旅館、青森県 谷地温泉、福島県 横向温泉/滝川屋旅館、福島県 木賊温泉/河原の共同湯、宮城県 小原温泉/かつらの湯、福島県 二岐温泉/大丸あすなろ荘、長野県 奥蓼科温泉郷/渋御殿湯、群馬県 法師温泉/長寿館、福島県 木賊温泉/旅館 井筒屋、山梨県 下部温泉/くつろぎの宿 裕貴屋
【析出物がすごいお湯】
北海道 二股らじうむ温泉/二股らじうむ温泉旅館、北海道 ホロカ温泉/ホロカ温泉旅館、群馬県 赤城温泉/御宿 総本家、秋田県 矢立温泉郷/矢立温泉、長野県 加賀井温泉/一陽館、埼玉県 神流川温泉/湯郷 白寿
【強烈個性のお湯】
群馬県 奥万座温泉/万座ホテル聚楽、埼玉県 都幾川温泉/旅館 とき川、長野県 毒沢鉱泉/神乃湯、秋田県/玉川温泉、長野県 稲子湯温泉/稲子湯、山形県 寒河江花咲か温泉/ゆ〜チェリー
番外編 共同浴場の楽しみ方
群馬県 草津温泉、長野県 野沢温泉、長野県 渋温泉、群馬県 四万温泉、栃木県 那須湯本温泉、栃木県 塩原新湯温泉
書評まとめ
本書はすでに絶版となり、記載されている宿泊施設には閉業となっているところもいくつか
みられます。
しかし本書の価値が色褪せないのは、温泉ファンが歓喜するような温泉しか載っていない、
正真正銘の本物の温泉リストだからです。
温泉の「湯」に魅せられて、その追求のために日本中を駆け回った人がオススメする
「お湯リスト」の温泉は、温泉好きにとっては間違いのない選択肢となるでしょう。
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著者がキレイな女性というのも影響がありそうですが、温泉リストとしても貴重な1冊です。


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