医者が教える最強の温泉習慣 一石英一郎著

温泉本
医者が書いた温泉の本です。
内容は、なぜ温泉が健康に良いのかの理由と、健康効果のエビデンスの説明、
また目的(症状)別の適応泉質が紹介されています。医者が書いた、というととにかく健康志向の人は食いつきますね。
もちろんそれは、学術的裏付けがなされているという信頼に基づいています。

「医者が書いた」が一種のブランドと化している印象ですが、きちんと学術的な裏付けが
なされているであろうこと、そして各種論文や研究報告なども織り込みながら、それらの
参考文献が巻末に添付されていることからも、信憑性が感じられます。

温泉マニアとしても勉強になるとともに、知識に医学的裏付けが得られて満足できます。

著者について

一石 英一郎(いちいし えいいちろう)
1965年、兵庫県生まれ。医学博士。国際医療福祉大学病院内科学教授。京都府立医科大学卒業、同大学大学院医学研究科内科学専攻修了。日本内科学会の指導医として医療現場の最前線を牽引する一方、伝統医療と西洋医療との知見の融合や統合医療研究、医工学研究、最新の遺伝学にも造詣が深い。温泉入浴指導員の資格も有するなど、温泉を活用した健康増進にも精通する。

-amazonより引用-

伝統医療と西洋医療との知見の融合、温泉入浴指導員の有資格者、というところが
「温泉専門家」たる理由でしょうか。

温泉は伝統的に健康に良さそうだ、という感覚がありますが、昨今の医学的研究によって
その根拠が証明されつつあります。この本の著者は、一般人にも分かり易いように優しく
平易な言葉で説明してくれています。

温泉がもたらす健康効果とその理由

この本は「医者が書いた温泉本」のジャンルになりますので、医学的なエビデンスが示された
効果について説明されています。
一部の「こだわり」がある、温泉マニアや秘湯マニアにとっては、少々物足りない入浴法だと
感じてしまいかねない内容に見えます。

ただし、それがデメリットなのかというとそうではなくて、「医者が書いた」という点が、
安全で、かつ効果的に、誰でも温泉の健康効果を享受できるようになる、という事です。

交通事故より多い「ヒートショック」による死亡事故も問題になっています。
そんな状況もありますので、この本の果たす意義はとても重要になると思われます。

温泉が健康にいいのはなぜ?

この本で主張している温泉の効果としては、物理的・化学的・生物学的作用の3因子がある、
ということになっています。本文中から引用すると、

温泉の効能は、「物理的作用」「化学的作用」「生物学的作用」の三つの因子によるとされていますが、温泉の温度や水圧などによる「物理的作用」と、食塩や二酸化炭素など温泉に含まれる成分による「化学的作用」が相まって、体を芯から温めてくれます。これらの作用は、自宅の風呂では再現できないものです。
ちなみに、温泉の効能の「生物学的作用」とは、自律神経やホルモンバランスなどの生体機能を整えることによるリフレッシュ効果や癒し効果を指します。

物理的作用は、家庭のお風呂でも再現できそうです。

別の医者が書いた温泉の本(『最高の入浴法』早坂信哉 著)でも、家庭での入浴によって

体が温まる温浴効果や静水圧による刺激・マッサージ効果により、血流が促されて疲れを取り
やすくしたり、体の不調を緩和する方法が説明されています。

化学的作用は、これぞ温泉の効果、と言いたくなるものです。温泉に含まれる成分により、
様々な適応症や効能といった形になります。これは泉質ごとに異なり、特徴になります。

これの違いを体感したくて、各地の温泉を回ることになります。

この化学的作用については、家庭用入浴剤を使用することによって、一部再現することも
可能です。しかし例えば二酸化炭素が含まれる温泉を再現しようとしても、
天然の温泉に含まれるほどの高濃度は、再現が非常に難しく、むしろ不可能とも言えます。

ですから、入浴剤の効果としては「水道水を温めたお風呂+α」の程度となります。
また、中には効果が期待できないものも紛れていることもあるようですので、確実に効果を
得るためには、やはり本物の温泉に浸かるのが間違い無いということです。

生物学的効果についても、先述の温浴効果や化学的作用の組み合わせ、さらには「転地効果」
といって、温泉地に移動することによる精神的開放感、日々のストレスからの開放感などに
よる癒し効果などの影響が指摘されています。

様々な健康促進効果が証明されていますが、まだまだ温泉による効果は解明しきれてません。
各作用の組合せの違いやタイミング、入浴する人の状態などにより、新たな相乗効果などが
発見されるかもしれません。

色々ありますが結局は、温泉は「気持ちいいから行く」でいいと思うんです。
そう思って気楽に過ごすことが、結局は健康になるには大切なんじゃ無いかなあと。

で、何に効くの?温泉の具体的効能の例

温泉が健康にいいのはわかった。じゃあ具体的に何に効くの?という事です。

端的に書いてしまえば、体が温まり体温が上昇する事によるメリットとして、
免疫力の向上による風邪の早期回復、ガン克服可能性(ハイパーサーミア療法との関連)、
代謝の活性化によるデトックスやダイエットなどについての言及があります。
他には怪我が治りやすくなるものや目への作用、痔、痛風、リウマチ、痛みの緩和、呼吸筋の
強化といった効果が紹介されています。

泉質ごとの適応症もあり、上記の効果が強化されたり(怪我が治りやすくなる、等)、
泉質独特の効能も紹介されています。
泉質別の適応症については、「5章泉質を知れば、温泉はもっと脳と体を癒やす」を
参照していただくと、わかりやすいです。

精神面への作用についても言及しており、温泉に入ると単純に気持ちいですから、
リラックス効果(α波が出る)や、温泉に含まれるミネラルなどの成分が皮膚を通じて
吸収される、という事が書かれています。

現代の食生活ではミネラル分が非常に不足しやすいそうで、温泉に含まれるこれら成分を、
飲泉可能な場合は経口摂取、その他の場合には経皮摂取により補給することで色々な不調の
改善が期待できるとの事。

効果的に温泉に入る方法や注意点など

これまでに紹介してきた温泉の健康効果ですが、正しい方法で入浴しないと、
健康どころが体に負担をかけてしまう事になります。

そこで、効果的に入浴するための方法やポイントが書かれていますので、まとめます。
◆入浴のタイミング(朝風呂、夜風呂)は、目的ごとに温度や時間で使い分ける。
◆入浴前には緑茶を飲むと良い。
◆入浴は食前がおすすめ。入浴後すぐの食事は避ける。
◆かけ湯で事故防止。手足など末端からかけ湯する。
◆安全のためには入浴時間が重要(必要以上の長湯は避ける)
◆温泉ごとに適切な入浴時間は違う
◆温泉で雪見酒は危険
◆サウナは適切な利用を!水風呂も正しく使う事。
◆極寒の露天風呂は非常に危険。 他

お風呂好き、温泉好きなら常識的な知識として知っている方も多いのでは。
これらの内容について、なぜそれが危険なのか、危険を避けるにはどうすればいいのかが
詳しく書かれています。
根拠がきちんと示されているのは、読む側としても安心して実践できます。

安全に温泉を楽しむ、安全に効果を得る、という観点から言うと、この内容が
当書籍の一番のキモでしょうね。

 

この本をオススメする人

温泉で健康効果を得たいと考えている人。または安全に温泉を楽しみたい人。

何らかの疾患を抱えている場合、体に負担をかけず安全に入浴する必要があります。
そういった方は、主治医の指示に従うのはもちろんですが、安全に効果を得るための、
根拠が明確な知識を持つことが重要です。

湯治や温泉入浴に関する情報は、伝統的な言い伝えや慣習が元になっており、
根拠の怪しい情報もかなり溢れています。
それらの有効性や作用メカニズムなどは今後の研究に期待するところですが、現状では、
こうした医者などの学術的な知見を有する人が書いたものを活用することが重要です。

この本から得られること

この本は「医者が教える最強の温泉習慣」と言うタイトルからもわかるように、
医者が根拠を持って主張する温泉の健康効果の獲得と、そのための安全な入浴方法の紹介
が主な内容です。

主に体の冷えやミネラルの不足から来る心身の不調に対して、低コストで改善が見込める
方法を知ることができます。

また、わかりやすい表現が多用されているので、本を読み慣れない人や温泉に関する文献に
あまり親しみがない人でもとっつきやすい印象です。
安全な入浴についての基本的な知識が得られて、比較的実践しやすい内容が多いです。

 

書評まとめ

温泉が好きでたくさんの入浴経験があると、自己流で温泉に入る方法を編み出していたり、
独特の入浴形式のようなものが確立されていたりします(私もその一人)。

そんな独自のこだわりと、最新の医学的エビデンスに基づいた安全性の比較を、
この本の内容によって行うことができました。

温浴による健康効果を得るために必要なライン(温度や時間、入浴タイミングなど)が
明確にわかったことで、これら知識を踏まえた上で、自分に一番しっくり来る入浴方法を
探す楽しみも増えてきます。

本自体の記述に関しては、一般向けと言うことで専門用語の使用が少なく、使用する場合でも
説明があったりしてとても親切な印象です。語り口も優しい感じで好印象でした。
他の医者が書いた温泉系の本とも重複する内容があったりしましたが、それはそれで記述内容
の信ぴょう性の向上に寄与しています。

わかりやすさ、内容の実践のしやすさ、目的別入浴法・泉質の探しやすさから、とても満足度の
高い本であると言えます。

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